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House Creation関係ない話し
くにひこ

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[issue]  実 家

昨年の秋頃から

そりゃあ新しかろう良かろうだろうが古い物は尊い

と歌っている新しくない曲を飽きもせず毎日通勤中に聴いています。

新築を売る職場に行くのに大丈夫かと自分でも思いますが

多分それは私自身引っ越しを経験したからなのかもしれません。

 

2002年地元に戻った私は自分と同い年でもある築28年の中古戸建を手に入れました。

既にボロボロな状態の二階建てパネル工法だったのですが

独り暮らしという事もあって細かい事は気にせず、キッチンやユニットバスを交換し、

古いけど広すぎる4LDKに住むことにしました。

当時はまた近いうちに別の地域へ引っ越すだろう、くらいに思っていたので

仮の住まいだった訳です。

 

しかしそう思い通りには運ばないもので

結局2019年まで住んでしまいました。その古家は築45年になり、当然ながら不具合の度合いは増すばかりとなります。

窓ガラスの結露は当たり前、換気も良くないので空気清浄機は2台同時にフル稼働の日々。

壁の断熱が効いているのか怪しいもので夏は暑く、冬は寒い、半屋外のような体感温度です。

吹雪の夜なんかはテントの方が暖かいんじゃないのか、と思うくらいの隙間風。

そんな環境なら逆に体は鍛えられそう、と思われがちですがちゃんと風邪もひくので特にメリットはありません。

そんなこんなの17年、独り暮らしから五人家族へと生活も変わったことで、

古くても広い家は、かなり古くて狭い家に成り下がります。このままではいけない。

そしてこのパネル住宅に別れを告げ近所に引っ越すことになりました。

 

引っ越しで、その大変さをあらためて体感しました。

 

お客様には、住宅の完成日と見学会の期間、手直しの予備日を設定した後に

お引越し日を検討頂いて、晴れて新生活ですね とお伝えするのですが、

荷物の梱包、運搬、開梱、整理などとても1日では終わらない。。

晴れてどころではなく全然片付かなそうな新生活に

皆さん、どうしているんだろう? と、申し訳ないのですが疑問に思ってしまいました。

 

とはいえ、引っ越しは終わらせなくてはいけません。

異常に暑い秋の週末、湿気のニオイも籠る旧家から無臭状態の新居へ何回もの往復。

やがて日も暮れて、最低限の作業を終えたころには疲労でいっぱいなのですが

それ以上に真新しい内装、広くなった空間のすっかり虜に。

そりゃ新しい方が良いわねー、の想い120%でその日は深い眠りに落ちるのでした。

 

翌朝も終わりの見えない片づけをしながら、新しい部屋の良いところばかりが目に入り、言葉にも出して再確認します。

昨日のそりゃ新しい方が良いわねー、がまた続くわけで、あっという間にサザエさんの時間です。

とりあえず今日はここまでにしようかと一息つこうとしたとき、

いくらちゃんよりちょっと話せる程度の末っ子2歳が、ふと言うのです。

 

「いつ、おうちにかえる?」

 

ここが新しいお家なんだよ、と皆笑いながら答えてあげるのですが

本人はどうやら真剣な様子で引き下がりません。

 

「もう、かえろう?」

 

このやり取りは毎日、2週間くらい続きました。

 

 

「ぼく、おうちにかえる」

 

 

数か月経つ今も「前の家」が彼にとって「おうち」のまま、「実家」のままです。

狭くて、微妙に湿気臭い、隙間風つきの家。

ドアノブはぶらぶらしているし、畳の端は擦り切れてるし、自分で取り付けた地デジアンテナなんか

強風の日はまともにデータを送らない全く快適じゃない建物に、

彼は今も帰りたいアピールを繰り返します。そんなに楽しい2年間だった?

 

その健気な姿を見て、いい大人の私たちはちょっと反省したりもします。

そりゃあ新しかろう良かろうだろうが古い物は尊い

 

 

新築を展開する我々はどう昇華したらよいのでしょうね。

現実には新しいモノに交換したり、捨てたり、移動したりを強いられる事さえあるなかで

新しい物が大きい、広い、多い、だけじゃなく、数えられない事柄も大切にしてもらえるよう、

思い入れ強めの実家づくりを意識していこう ということで。

 

 

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くにひこ
著者:くにひこ

本コラムは、住まいづくりと不動産に関わるみなさんへお役立ち情報をできるだけわかりやすく更新しています。

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